Caregiverのケアというと聞き馴染みがないかもしれません。家族など介護者のケアについては、認知症のケアや神経難病など、家族がどのように本人を支えるかという観点でもとても重要かと思います。このテーマはSWとチャプレンがプレゼンしてくれました。

緩和ケアチームのSWの仕事は、退院調整などのケースマネジメントではなく、心理的なサポートが中心とのことでした。米国の緩和ケアのSWの役割に関してはCAPCのサイトが役立ちます。

彼女はSWとして緩和ケアのトレーニングを8ヶ月オンラインで受けたようです。

https://www.capc.org/toolkits/social-work-palliative-care/

NCP(National Consensus Project)のガイドラインによると

“SWは 家族のダイナミクスに注意を払い、コーピングのメカニズムや健康の社会的決定要因を評価・支援し、資源を特定・利用しやすくし、意見の対立を調整する”ことが役割となっている。

SWは以下のようなことをCareegiverのアセスメントで気をつけているとのことでした。

・Personhood (どんな人か?) 

・ストレスへのコーピングスタイル

・家族のサポート体制

・患者の病気の体験

・家族の予後の認識

・家族の病気の体験

・感情的なストレス、予期悲嘆  

・病気になったことで家族内の役割の変更

・意見の対立のナビゲーション

・脆弱な家族メンバーのアセスメント 

・正常化、正当化(Normalize, Validate) 

日本ではCaregiverのケアは保険でカバーされてないので、時間があれば行うとされていることが多いような気がしました。家族は第二の患者であり、家族も苦しんでいることが多いです。
米国では、システムとしてCaregiverのケアがカバーされているのは素晴らしいなと率直に感じました。

またチャプレンからはスピリチュアリティについて話がありました。

日本では宗教的な信念を持ってる人は30%弱ですが、米国では75%程度あるようです。

・奇跡を信じる

・答えのない祈り unanswered prayer

・死後の質問

・なぜ私が?

などで患者から相談があるようです。また複雑な問題にも対応します。

・突然の危機、小児のケース、外傷のケース 

・怒り、批判、罪悪感などやり場のない感情

・自殺企図のケース

・複雑な家族間の問題 

幅広く対応されておりました。

彼女は京都の大学に行っていたこともあり、日本の文化背景にも知見を有するようで、日本でのスピリチュアルケアについても今後ディスカッションしていきたいと感じました。

最後に奇跡を信じます。と言われた時のコミュニケーションについて勉強したことを共有します。

奇跡にも色々なパターンがあります。新薬が出ることを望まれること・ICUだと少しの動きが病態の改善と捉えられることがあります。好奇心をもって聞き、より気持ちを明確にすることは重要です。

あなたが望んでいることについて、もっと教えてもらえますか?

あなたにとって奇跡とはどのようなイメージですか? 

他に望んでいることはありますか?

このように聞くことで奇跡的な結果を望む気持ちを認めつつ、病気が治癒しなかった場合のさらなる希望を聞くことができます。以下のような奇跡の種類があると言われています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10182410/

奇跡を信じる患者さんにはAMENというコミュニケーションスキルがあります。

ポイントは、否定しないことです。

But(でも)などの逆説的な言葉ではなく、And(同時に、一方で、)という言葉を使います。

見捨てられると感じるとコンフリクト(意見の対立)につながります。

希望と不確実性は隣り合わせです。関係性を大切にしたケアを行っていくことが重要です。

AMENは以下の単語のゴロ合わせです。

Affirm the patient’s belief and validate his or her position: 患者の信念を肯定し、その立場を確認する。

“Xさん、私もあなたの奥さんが元通りに回復することが一番だと望んでいます”。

Meet the patient or family member where they are: 患者や家族の希望に合わせる。

“私も奇跡が起きればどんなにいいかと思います。

Educate from your role as a clinician: 医師として話をする

”一方で、医師として今の状態について説明もしなければなりません。”

No matter what” 病気がどのように進行しようとも、患者や家族のために全力を尽くすことを保証する、見捨てないという。

”どのような方針になっても、私たちはできる治療やケアは行っていきます。急に見捨てるということはないので、安心してください。”

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/jop.2014.001375

日本でも家族ケアやコミュニケーションが大事なことは変わらないと思います。SWやチャプレンがいなくてもジェネラリストや緩和ケアに興味がある医療者ができるようになるのが理想だなと感じました。