スタッフの石上です。最後は医療者のケアについてです。プログラムディレクターのAzi先生が自ら話してくださいました。コロナ禍でより重要視されたこともあり、米国でもバーンアウトの予防はホットトピックのようでした。
1 組織の取り組み
2 プログラムの取り組み
3 現場での取り組み
の3つの軸がありました。
1 組織の取り組みとしては、シュワルツラウンドを行っているみたいです。
シュワルツラウンドは医療者が弱さを共有することができるオープンなものです。
パネリストが自分たちの視点から体験談を話します。
感情に重点が置かれています。
トピックはケースに関連する言葉や、物事がうまくいかないときや忘れられない患者などのこともあります。訓練を受けたファシリテーターがグランドルールを説明します。守られた場であることを説明し、問題解決ではなく、リフレクションする場であることを説明します。
Ceders-Sinai病院ではシュワルツラウンドは2ヶ月に1回の頻度で多職種で誰でも参加できるようになっています。
1ヶ月かけて準備して、話し合いに臨まれます。
毎回100-150人ほど参加があるようで、現地50人、オンライン80人程度のこともあるみたいです。
トピックは
・不確実性にどう対応するか(確実ではない中で判断していいのだろうか・・)
・共感疲労(感情移入しすぎて辛い・・)
・不全感(もっとこうすれば良かったのでは・・)
などです。
2 プログラムの取り組み
・医療スタッフのストレス、レジリエンスサポート
・医療スタッフの負荷の調整
・スタッフの分析
・非医療的な時間を作る
・キャリア計画
・緩和ケアのプロジェクトへの参加
・1年に1回のリトリート
3 現場の取り組み
・亡くなった患者のレビュー
・月に1回のフェローのリフレクション
・多職種のラウンドで自然にデブリーフィング
などを行っているようでした。職場のストレスに職場外で対処するという考えが一般的で、職場のストレスは個人の責任というのが暗黙の前提となっていると思います。このような形で職場でも行えるのが良いと思いました。
バーンアウトは、仕事の負荷が個人のリソースを上回ったときに起こる。
レジリエンスは、個人のリソースを高めて仕事の負荷に応えた時に高まる
と言われています。
医療者のケアを行う時にも雨(仕事の負荷)と傘(個人のリソース)の例えがあります。
こうした医療者のケアは個人のリソースが強くなるので、傘を強くしたり大きくするものですが、雨(仕事の負荷)は降り続けます。
特に緩和ケアを広げていこうと思ったら、断らないことも特に重要となるし、依頼者の満足を上げるためのコミュニケーションが必要なので難しいケースが増えます。
仕事の量がどんどん増えると、そもそも傘が強くても、嵐が強いので、医療者はバーンアウトするのではないかと感じます。
その悩みについて聞いたのですが、同様の悩みがあるようでした。彼らも個別のキャパシティを見ながら仕事を割り振りしてるようです。
アンソニーバック先生のレジリエンスとバーンアウトの関係の論文がこの分野だと有名なのですが、これに沿って説明されてました。リンク先から無料で読めます。
https://www.jpsmjournal.com/article/S0885-3924(16)00073-7/fulltext
当部門でも医療者のWell-beingに焦点を当てたカンファレンスを行っています。
こちらはもう少し少人数でオンラインで10人ほどレジデントとフェローで行っており、その取り組みを紹介しました。運営にあたっては準備がとても大事という点は共通していました。
医療従事者が「もうしんどい」と感じたときのセルフケアの話(松本学先生のスライドより)
緩和ケアを長く続けていくには、自分たちの健康や感情のケアがとても重要です。学びが多いセッションでした。