連ケア科1年目医師のYuukiです。

現在、緩和医療多施設抄読会に週1回参加しておりまして、先日自分が気になる論文を紹介する機会がありましたので、今回はその論文について皆さんに簡単にご紹介したいと思います。

Yuuki

こういう場で発表するのは初めての経験だったので、緊張しました…

多施設抄読会って

多施設抄読会は、全国から約10の医療機関が参加しております。

それぞれに担当雑誌があり、最新の論文雑誌から「緩和ケア」や「がん治療」などに関することをピックアップし、紹介していきます。

週1回開催しており、時間は約1時間です。

発表した論文は?

発表した論文はこちらです。

What are the sources of distress in a range of cancer caregivers? A qualitative study

Taylor J, Fradgley E, Clinton-McHarg T, Byrnes E, Paul C.
Support Care Cancer. 2021 May;29(5):2443-2453.
Epub 2020 Sep 14. PMID: 32929537.

様々ながん患者のcaregiver(介護者)にとっての負担の原因は何か?という質的研究 です。

日々の緩和ケア診療において、患者さんの家族やケアに関わる人から様々な負担があることを伺います。それが原因で、自宅療養が困難となっているケースもしばしば経験します。。

これまではお話を聞くだけしかできていなかったのですが、どのような点に負担を感じることが多いのか、どのようなサポートを望んでいるのかについて知りたいと考え、この論文を選択しました。

実際の内容は?

以下にこの論文の概要をまとめます。

目的:がんと診断された人を介護することは、介護者の健康や患者の転帰に影響を及ぼす可能性のある苦痛の増大と関連している。しかし、介護者の苦痛に関する研究は比較的少ない。このオーストラリアの研究では、介護者が報告した苦痛の原因を幅広く調査した。

方法:本研究では、「Structured Triage And Referral by Telephone」(START)試験」で特定された苦痛を感じている介護者を対象に、半構造化インタビューを実施し、グラウンデッド・セオリーの手法を用いた。グラウンデッド・セオリーの枠組みを用いてテーマを設定し、2人の独立したコーダーがNVivoソフトウェアを用いてデータを分析した。

結果:介護者(n = 14)の年齢は25歳から80歳までで、その中には2人の遺族も含まれていた。介護者と患者の関係は、パートナー(n=8)、親(n=1)、子(n=3)、兄弟(n=1)、友人(n=1)であった。悩みの原因については、大きく分けて6つのテーマがあった。

  1. 十分でタイムリーな情報の欠如
    • 特に状況が変化した際の情報の欠如で苦痛が増大。
  2. 不確実性
    • 治療経過に不透明感がある中でも、追加で意思決定していかなければならない。
  3. 介護の役割と義務
    • 合併症の際に救急外来を受診すべきかの判断や、Bad news tellingなど。
    • また介護者は複数の役割を担っている事もある(子育てや他の家族の介護など)
  4. 家族中心の情報の欠如
    • 子供への説明やグリーフケアの不足。
  5. 現実的な問題
    • 収入の減少や休職期間、交通費など。
  6. 苦痛の影響
    • 衰弱したりパニック発作が出る方もいる。

● この研究によって分かったこと

  • 介護者は複雑で複数の役割があるため、病期に応じて十分な情報にアクセスできる必要がある
  • 子供や周囲の人のための情報も必要
  • 介護者に継続的に連絡窓口を作っておくことが重要なサポートとなりうる
  • 自分のニーズは患者の二の次と考える傾向があるため、積極的なアプローチが必要

今後へ向けて

「自分のニーズは患者の二の次と考える傾向があるため、積極的なアプローチが必要」と論文内でも記されており、確かに日常臨床でもそういった考えを持った介護者の方と接することがあると感じました。

「(がんで闘病中の)本人が一番辛いはずだから、自分の苦労や負担なんてどうっていうことはない…」と感じている家族や介護者は少なくないと思います。

そういった点でも、緩和ケア専門家の立場で家族の負担感について具体的に聞くことが重要で、その際は上記の6つのポイントについてお話を伺うことで、細やかな家族ケアにつながるのではないかと感じます。

Yuuki

明日からの臨床に活かしてまいります!!

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