こんにちは、緩和ケア医1年目の坊主です。
前回は、緩和ケア医としての業務を開始して感じたことを記事にしました。
「坊主」というペンネームで記事を書いていますが、これは自分が仏教(浄土真宗)の僧侶でもあることからこのペンネームに決めました。
今回は医師であり僧侶でもある自分の目線から、業務の中で考えたことを綴ってみようと思います。
いつか来る「別れ」、そして「お見送り」
緩和ケア医としての業務の中では、残された時間の限られた患者さんと関わることも多く、患者さんの最後のお見送りをすることも度々あります。
この記事を読んで下さっている方の中には、医療従事者として死亡確認や病院からのお見送り・出棺などに関わったことのある方も多いのではないでしょうか。何度か経験すると、そういった時のお作法も大抵の場合は困ることやトラブルなく執り行えるようになってくると思います。
しかし一方で、お作法には慣れていても「これでいいのかな」「どうすればいいんだろう」と対応に悩む時もあるのではないでしょうか。
自分の「普通」と他人の「普通」
自分が以前勤めていた病院では、亡くなった患者さんをお見送りするときに、故人にお線香をあげ、手を合わせてお見送りしていました。
その中で、患者本人と家族がキリスト教を信仰しているケースがあり、自分の持つ宗教的背景と、患者家族の信仰がはっきりと異なる状況で、どのように振る舞うべきだろうと悩んだことをよく覚えています。
自分が「普通」だと思うやり方って、
きっと浄土真宗のスタイルなんだよなあ。どうしよう?
これを読んでいる皆さんは、自分の家族が亡くなった時に、医療スタッフが合掌していたらどう思うでしょう。「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」と唱えていたら?あるいは、十字を切って聖歌・讃美歌を歌っていたらどう思うでしょう?
自分は浄土真宗の僧侶だから、自分の家族がそうなったときに
合掌して「南無阿弥陀仏」と唱えているのを見ても、ごく自然に感じると思う。
でも「南無妙法蓮華経」と唱えていたり、十字を切っているのを見ると、きっとモヤっとするだろうな・・
逆に、他の宗教や宗派を信仰する家族から見たら、「南無阿弥陀仏」ってモヤっとする言葉かも?
ちなみに自分が医療スタッフとしてお見送りをするときは、合掌するかどうかはご家族の振る舞いに合わせ、お念仏を唱えるときはマスクの下や心の中で聞こえないように唱えています。
お念仏やお題目を唱えたり、手を合わせたり、十字を切ったりというのは宗教的なふるまいとしてわかりやすい例ですね。しかし生活や言葉に溶け込んでいる宗教的なものというのは多く、人によっては隠れたモヤっとポイントだったりするのかもしれません。自分が過敏なのかもしれませんが。
個人的には「天国」とか「ご冥福」といったワードはモヤっとポイントです。
最近は「お悔やみ申し上げます」も少しモヤっとしますね。
臨床における「宗教家」の存在意義
先日、大学にて臨床宗教学講座を受講された先生とお話をする機会をいただきました。
その講座の受講生の中には臨床宗教師を目指す宗教家の方々がおられたそうですが、そこでは自分の宗派性を無くすことを指導されるそうで、骨身に染み付いたものを出さないようにするというのはなかなか苦労しておられたそうです。
宗派性を出さないとなると、臨床における「宗教家」の役割ってどんなことでしょうか?
東北大学文学研究科実践宗教学寄付講座のHPの「臨床宗教師とは」で以下のように書かれています。
「臨床宗教師」は、被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で心のケアを提供する宗教者です。
「臨床宗教師」という言葉は、欧米のチャプレンに対応する日本語として考えられました。
布教や伝道を目的とするのではなく、高度な倫理に支えられ、相手の価値観を尊重しながら、
宗教者としての経験をいかして、苦悩や悲嘆を抱える方々に寄り添います。
教義より、宗教家としての目線や倫理観、人とのかかわり方を活かすってことなんですね
一方,で自分個人としては、信仰を同じくする患者さんに対して信仰や教えについて話すことで終末期におけるケアを提供する関わり方もあるのではないかと考えていて、特にスピリチュアルペインなどの領域においては、科学に扱えないことを扱う宗教だからこそできることがあるのではないかなと思っています。
これからも、医師であり僧侶でもあるという自分ならではの目線から、自分にできることを考え続けていきたいと思っています。
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