こんにちは!
今回は、9月2日にオンラインで行われた「救急×緩和ケアLIVE」という勉強会についてです。
このブログで救急×緩和ケアLIVEを扱うのは2回目(1回目はこちら)。
救急や集中治療の領域における緩和ケアを学ぶオンライン勉強会です。
今回は、「小児心肺停止時の家族対応@ER」というテーマで、あいち小児保健医療総合センター救急科の松浦潤先生のレクチャーでした。
小児の心肺停止。家族ケアはどのように行うべきか?
講師の松浦先生がかつて所属していた済生会滋賀県病院で作成された院内指針である、
「小児院外心肺停止症例に対する 病院前救急診療と救命救急センターにおける家族ケア指針」。
今回は、その作成過程と内容についてのお話でした。
小児心停止を目の前にした家族への対応は、様々な困難さを伴います。
特に救急外来では入院診療と違い、初対面の家族に対応しなければなりません。
さらに、事例自体が多くはないため、医療スタッフも経験を積むことが困難なのです。
そこで済生会滋賀県病院では、家族ケアの院内指針を作ることになったのです。
ポイントは、医療行為のフローなどではなく、「家族ケアの指針」であるということ。
【病院前】【蘇生中】【死亡確認後】といった場面に分け、
各シチュエーションでの医療者の取るべき行動や望ましい声掛けなどが盛り込まれています。
例えば、
「家族に蘇生現場を見せるべきか?」
「救命が難しいことをどのように理解してもらうか?」
「検視や解剖をどのように説明するか?」
といった現場で悩むことになるであろう問題に関して、
今あるエビデンスや、院内のシミュレーションとディスカッションで挙がった意見などをもとにした、
考え方、具体的な行動、会話例などが記載されています。
もちろん明確な答えがある問いばかりではありませんし、
事例によって対応が異なることも多いわけですが、
いざ対応が必要になったとき、
時間が限られた中で、その場のスタッフがすべてをマネジメントするのではなく、
あらかじめ院内に指針があり、それをベースに対応することで、
まさにその瞬間に深い混乱や悲しみに直面している家族対して、
より質の高いケアが叶うのだと感じました。
経験が積めないからこその、指針。
指針の「中身」についてもさることながら、「指針作り」という点についても、とても興味深いレクチャーでした。
なかなか経験できないけれど、いざ起きたときの対応がとても重要なこと。
その対策の重要性や考え方は、身近な例では防災訓練とも似ているかもしれません。
何度も起きるものではないから実戦の経験値はほとんど積めないし、そもそも起きないにこしたことはないけれど、いざ起きたとき、その一回に、適切に対応できるかどうかが非常に重要。
だからこその、準備と訓練なのです。
シミュレーションとディスカッションを繰り返して内容を吟味し、実際に使うことがあればそこでの達成と反省を振り返り、改めて内容をブラッシュアップする。
今回は、その「指針作り」の実際の流れをたどるようなレクチャーでもあり、
経験値を積めないことに対していかに備えるか、ということのお手本の意味でも、勉強になりました。
おわりに
今回はいつも以上に視聴者が多かったようで、
問題の困難さや深刻さ、指針のニーズが表れていると感じました。
またZoomのチャット機能やQ&A機能を用いて視聴者が質問することもでき、「グリーフケア外来のタイミングは?」「兄弟姉妹にも蘇生行為を見せるべきか?」「関わった医療スタッフのメンタルケアは?」など様々な質問に対して、講師やパネリストの先生方の意見を聞くことができました。
次回の「救急×緩和ケアLive」は、9月24日(金)21:00~、
飯塚病院救急科の片桐欧先生による、
「いつ蘇生中止をするべきか? TOR(Termination of resuscitation)の現状とエビデンス」です。
■日時 9/24(金) 21時〜22時
■講師 片桐 欧 (飯塚病院 救急科専攻医)
■配信方法 ウェビナー利用。以下のリンクより事前登録をお願いします。https://aih-net.zoom.us/…/reg…/WN_uks6TKPfR8OZUkXtWlpHfQ
今後もいろいろなテーマでのレクチャーが予定されています。興味があればぜひ、参加してみてくださいね。
それでは!