こんにちは!
連携医療・緩和ケア科所属、内科専攻医1年目のkentoです。
今回は、緩和ケアにまつわる本の紹介です。
今回紹介するのは…
『米国緩和ケア医に学ぶ 医療コミュニケーションの極意』
(著:アンソニー・バック/ロバート・アーノルド/ジェームス・タルスキー、訳:植村健司)
です!!
「コミュニケーションを親身になって教えてくれる先生」は、ここにいました
日々の診療の中で、検査や治療の知識はもちろん大事ですが、
コミュニケーションの取り方について悩むことは少なくありません。
しかも、病気についての知識であれば文献や上級医から教わることができますが、
コミュニケーションはなかなかそうもいかず…。
指導医たちは1日の終わりに血液検査や画像検査、治療のことについては研修医に確認したでしょうが、患者さんに対して病気のことをわかりやすく説明したかはあまり問わなかったはずです。
p.7 第1章「あなたの技術を次の段階へ」
色々な場面で、コミュニケーションの困難は生じます。
そんなとき、傍らで手本を示し、その技術を丁寧に教えてくれる指導者が、みなさんにはいるでしょうか。
本書は実に、その役割を果たしてくれるのです!
予後について話し合うとき、複数の家族を相手にするとき、意見の対立がある場合など、
さまざまなシチュエーションについて、
そこで何を考えるべきか、何がポイントとなるかを解説してくれます。
また、話し合いの方向性を見失わず、大切なことを忘れないように
事前に確認しておくべき「ロードマップ」が用意されているのも特徴です。
沢山のケースと、知りたかったフレーズ
さらにポイントは、それぞれのテーマごとに、モデルのケース(シナリオ)がついていること。
それぞれのケースは面談の一部分を抜粋したもので、
「起こったこと」と「そこから学べること」が並列して書かれています。
参考となるケースを見ながら、医療者側、患者側のそれぞれの発言や行動に対して、
「この時、患者はこう感じている」「医者はこの言葉で、患者に〇〇を示すことができている」など、
上級医がその場でコメントしてくれているような体験ができるのです。
また、具体的なフレーズが無数に散りばめられているのも、大きな魅力です。
「ある患者さんはたくさんの詳細な情報について聞きたいといいますし、
p.84 第5章「予後について話し合う」より
ある患者さんは大きな全体像だけを聞きたいといいますし、
またある患者さんは自分の未来に予想されることを全く聞きたくないといいます。
あなたはどのような考えをお持ちですか?」
伝えたいことはあるのに、面談ではうまく言葉にできなくて、
意図と違って伝わってしまったり、結局うやむやにしてしまうこと、僕にはよくあります。
経験豊富な先生なら上手に言葉にできるかもしれませんが、
初学者にとっては、シーンごとに具体的なフレーズが示されている本書は、とても参考になりました。
まとめ
学ぶのが難しいコミュニケーションを、優しく教えてくれる指導医のような本でした。
実際文章は読みやすく、内容も決して難解ではありません。
自分が直面しているシチュエーションに合った部分を取り上げて読むこともできますし、
分厚い本ではないので、頭から一読するのもそこまで時間をかけずにできそうです。
特に、面談を任されるようになったけど、準備もフィードバックもあまりしてもらえず、
もやもやばかりが残るなあ…と感じている若手の先生に、お勧めしたい一冊です。
これからも緩和ケアにまつわるさまざまな本・作品を紹介していければと思います。
それでは!