後期研修医の鈴木です。
当院総合診療科専攻医で当科へ6週間のローテに来られていた内田先生が、これまでの当科での研修を振り返って最終発表をしてくださいました。今回は、不眠症の治療に関する学びを共有してくださいました。
※症例の詳細については、個人が特定できないよう、適宜修正を加えています。
睡眠障害とは:覚醒系と睡眠系のシーソー
睡眠は、覚醒と睡眠に関わる神経伝達物質の均衡によって調整されています。
- 覚醒維持:オレキシン、ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニン など
- 睡眠維持:GABA、アセチルコリン など
これらのバランスが、睡眠環境やストレス、加齢、飲酒やカフェイン摂取、生活習慣の乱れなどの要因で崩れると、睡眠障害が起こります。したがって、不眠に悩む患者さんで最初に検討するべきことは、投薬治療ではなく、介入可能な睡眠の阻害要因がないか?ということです。内田先生は、代表的な睡眠の阻害要因として以下のものを挙げられました。
- 身体的疾患:痛みや掻痒感を伴う疾患、認知症、パーキンソン病、むずむず脚症候群 など
- その他の身体的状況:発熱、便秘、夜間頻尿 など
- 精神的疾患:うつ病、せん妄 など
- 薬剤性:ステロイド、オピオイド、利尿薬、抗うつ薬 など
- 睡眠環境:騒音、匂い、照明 など
実際に内田先生は、がんによる腫瘍熱や便秘への対応によって、それまで続いていた夜間の不穏や不眠が改善したがん患者さんを経験されたそうです。
まずは非薬物的な不眠治療を
世界的にも、複数の不眠症に関するガイドライン(日本睡眠学会・米国内科学会・欧州睡眠学会など)が、「まず非薬物療法を行う」ことを共通して推奨しています。海外では第一選択が認知行動療法となっていますが、日本では睡眠衛生指導が第一選択となっています(鈴木注:日本の医療保険で認知行動療法を算定するハードルが高いこともその一因かもしれません)。厚生労働省は、睡眠衛生指導の具体的な指導内容として以下のようなものを挙げています。[参考:厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド 2023.]

不眠症に対する投薬治療と注意点
非薬物療法でも改善しない不眠症や、早急な睡眠確保が望ましいケースでは、投薬治療を検討します。代表的な睡眠薬の特徴を以下に整理します。その依存性や高齢者の転倒・健忘の原因になることから、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は近年処方が控えられる傾向があります。
<ベンゾジアゼピン受容体作動薬>
GABA受容体に結合し、睡眠を活性化する。前立腺肥大症、緑内障患者への投与は注意。
・ベンゾジアゼピン系:トリアゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム、フルニトラゼパム など
→注意が必要な副作用:転倒や認知症の進行、依存性(タバコやアルコール、大麻よりも上位) など
・非ベンゾジアゼピン系:ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン など
→注意が必要な副作用:味覚障害、パラソムニア(睡眠中の異常行動) など
※ベンゾジアゼピン受容体作動薬の急激な中断は、離脱症状の原因となる。
離脱症状:動悸、手指振戦、発汗、頭痛、けいれん発作、食思不振、嘔吐など
<オレキシン受容体拮抗薬>
オレキシン受容体を阻害し、覚醒を抑制する。
:スボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)、ダリドレキサント(クービビック)
・メリット:依存性に乏しい
・デメリット:共通の副作用に悪夢、ナルコレプシー、金縛りがある。
スボレキサントはCYP3A阻害薬と併用禁忌。
レンボレキサントは半減期が長く遷延しやすい。
<メラトニン受容体作動薬>
メラトニン受容体に結合し、概日リズムを改善する。
:ラメルテオン(ロゼレム)
・メリット:依存性に乏しい
・デメリット:作用機序から、頓用処方は望ましくない
※中途覚醒に対してトラゾドンなどの抗うつ薬を使用されることがあるが、保険外使用であることに留意
発表を振り返ってのまとめ
不眠症は、睡眠と覚醒のバランスが乱れることで生じます。その原因となっている身体的・精神的要素や生活環境に介入するだけで睡眠障害が改善することもあります。どうしても薬物療法が必要な場合は、各睡眠薬のメリットとデメリットを意識し、安易な/漫然とした処方を避けるようにしましょう。内田先生は、入院中の患者さんに睡眠薬を処方した翌日は朝の様子を見に行き、ふらつきや日中の傾眠などが無いか確認されているそうです。また、このような副作用に他職種スタッフからのご報告で気づけるケースも少なくありません。不眠症の対応に限らず、チームで患者さんのご様子を共有しあえる環境づくりが大切ですね。
内田先生、6週間の研修お疲れ様でした!
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