後期研修医の鈴木です。
当科スタッフの河内先生が、これまでの当科での勤務を振り返って中間発表をしてくださいました。今回は、悪性胸膜疾患に伴う偽性気胸をテーマに、学びを共有してくださいました。
※症例の詳細は個人が特定できないよう、適宜修正しています。
悪性胸膜疾患とEx vacuo気胸
【症例】呼吸困難感を主訴に来院した、子宮頸癌末期の比較的若年の女性。酸素化低下があり、単純胸部CT画像で胸腔に大量の胸水貯留を指摘された。胸腔CVを留置し、700mL/dayのペースで排液したところ、経過フォローで撮影した単純胸部レントゲン写真で同側に液面形成を伴う気胸を疑う所見が出現した。
〇偽性気胸
胸水の排液後、様々な原因で肺の再膨張が妨げられた結果、胸腔内の陰圧により生じたスペースに液体や気体が貯留する病態をEx vacuo気胸(Ex vacuo pneumothorax)と呼びます。通常の気胸は肺実質や胸膜の破綻によって生じる一方、Ex vacuo気胸は悪性胸水患者の5~20%に生じ、原因としては腫瘍や炎症による胸膜肥厚、慢性的無気肺や血流障害による器質的変化、癒着・瘢痕形成による肺の可動性低下などが知られています。
診断のポイント
- 画像所見
- 胸腔内のスペースに液体+空気が混在 → 液面形成が見られる
- 部分的な肺の虚脱(片肺全体の虚脱ではない)
- 胸膜肥厚・癒着所見
- 胸腔内の腫瘍浸潤
- 胸膜内圧測定
- 正常肺:排液とともに肺が拡張し、陰圧は漸減する
- Lung Entrapment:肺の拡張が不十分なため、排液とともに徐々に陰圧が強まる
- Trapped lung:肺が拡張しないため穿刺時から陰圧であり、排液とともに陰圧が急速に強まる
治療選択肢
1. IPC(Indwelling Pleural Catheter)留置
- 呼吸困難の改善効果あり
- 在宅管理が可能であり、入院期間の短縮につながる
- 一部で自然な胸膜癒着が得られる報告もある
- 感染リスクがある(特に悪性胸水では注意が必要)
- 胸水再貯留は防ぐことができない
2. 胸膜癒着術(Pleurodesis)
- Trapped lungでは無効
- Lung Entrapmentの段階であれば有効性の報告例あり
3. 外科的介入(胸膜剥皮術など)
- 肺の可動性を物理的に改善することができる
- 侵襲度が高く、適応は予後が比較的長い患者に限られる
文献的には、近年IPCがEx vacuo気胸に対する第一選択として推奨されつつあり、症状緩和への有効性も報告されているとのことです。胸膜癒着術は完全に肺の再膨張が阻害された病態では効果が得られないため、適応の判断には病態の見極めが必要です。外科的介入については、行える施設自体も限られており、かつ患者への負担も高いため、限られた状況での選択肢と言えます。
まとめと振り返り
Ex vacuo気胸は、悪性胸水管理時の合併症の一つです。穿刺排液後に生じるものの、いわゆる医原性気胸とは治療方法が異なるため、手技後に発生した気胸では背景となる病態の把握が重要です。緩和ケア領域においても、個別性のある病態理解が診療の質を高めることを再確認することが出来た症例でした。
河内先生、引き続きよろしくお願いいたします!
スタッフ募集中!
飯塚病院 連携医療・緩和ケア科は2026年度の内科専攻医・後期研修医・スタッフ医師を募集しています!お仕事などで大変な日々をお過ごしのことと思いますが、オンラインでの就職面談や病院紹介も承っております。
ぜひお気軽にお申し込みください!
緩和医療専門医をめざすあなたへ
当院では緩和医療専門医を目指す医師を募集しています!
興味を持っていただけた方は、お気軽に以下のフォームよりご連絡ください!
オンライン面談について
- 緩和ケアの研修や当院での勤務にご関心があっても、こういった社会状況では見学が難しいという方もいらっしゃると思います。
- そこでオンラインでの情報交換やご質問へのご回答もおこなっております。
- 個別に勤務の様子や研修内容、具体的な雇用契約内容などについて30分−60分程度、お話しさせていただきます。
- 以下のフォームより、オンライン面談の希望とご記載いただきご送信ください。

みなさまと一緒に働ける日を楽しみにしています!
