後期研修医の鈴木です。
今村総合病院から当科へ2か月間のローテに来られていた内科専攻医の福西先生が、これまでの当科での研修を振り返って最終発表をしてくださいました。今回は、対人関係の葛藤における心理学的アプローチと自己管理について、福西先生がまとめた学びを共有してくださいました。
※症例の詳細については、個人が特定できないよう、適宜修正を加えています。
脅威を感じるコミュニケーションの心理的背景
対人関係の葛藤は、医療者に限らず多くの人が直面するコミュニケーション課題の一つです。特に、相手の方の言葉や態度に威圧感を感じるような場面への対応は、苦手に感じる方も多いのではないでしょうか。人間が他者に対して高圧的な態度を取る背景には、主に4つの心理的要因が想定されます。
第一に「自己防衛」が挙げられます。これは自身の弱さや不安を隠すために、虚勢を張ることで自分を守ろうとする反応です。第二に「幼少期の影響」があり、厳格な家庭環境や愛情不足といった成育歴が、対人コミュニケーションパターンの形成に関与している可能性があります。第三に「支配欲と承認欲求」です。他者をコントロールすることで、自分の価値を確認しようとする心理が働いています。そして第四に「感情調整の未熟さ」があり、怒りや不安といった強い感情を適切に処理する機能が未発達である場合、攻撃的な言動として表現される場合があります。
これらの要因を理解し、相手を「単に嫌な人」と捉えるのではなく、適切な対応が必要な対象として客観視することが、対話を円滑に進めるための重要なステップとなります。
臨床現場で活用できる3つの対処法
では、医療者が診療にあたる際、相手の方の言葉や態度に威圧感を感じてしまった時、どのように対応していけばよいのでしょうか。医療者自身が疲弊せずに診療を続けるための具体的な方策として、福西先生は以下の3つを挙げて下さいました。
1. 心理的境界線(バウンダリー)の設定
バウンダリーとは、自分と他者の間に設ける心理的・感情的な境界線のことです。自分の中で「どこまでは許容できるが、どこからは無理か」というマイルールを明確に設定することを意味します。この境界線が曖昧な場合、他者の不当な要求に流されてしまい、自己犠牲的な対応に陥りやすくなります。例えば、相手からの拒絶に対して過度に引き下がってしまいそうになった時、あらかじめ「拒絶されてしまった時には、その理由を丁寧に聞き取る」と決めておくことで、対話を前に進めていくために必要な境界線を保つことができます。
2. 冷静な状況分析と受容
相手が感情的に高ぶっている時、その言葉に即座に反論したり、こちらの意図の説明を試みたりすることは、かえって事態を複雑化させるリスクがあります。相手が感情的になっている間は、まずその言動を一旦受け止め、反論によって相手が罪悪感を抱いたり論点がずれていくことを回避することが肝要です。その上で、なぜ相手がこれほどまでに感情的になっているのかを分析し、相手の視点を理解しようと努める姿勢が、対立構造を緩和する鍵となります。
3. 「Name it to tame it」による感情のコントロール
「Name it to tame it(名付けて手なずける)」は、自身の感情に名前をつけることで、その感情をコントロールしやすくする心理学的概念です。強い感情を経験すると、脳内の扁桃体が過剰に活動し、戦うか逃げるかの闘争・逃走反応を引き起こします。ここで「自分は今、恐怖を感じている」「相手は不安に駆られている」と言語化(ラベリング)することで、思考を司る前頭前野が活性化され、扁桃体の活動を鎮静化させることができます。ただし、相手を「高圧的な人」と固定的にラベリングしてしまうことは非常に危険です。不適切なラベリングを行ってしまうことで、以降のケアの質が低下し、相手への不利益を招くことが知られています。
研修を振り返ってのまとめ
結論として、対人関係に葛藤を覚えた際には、相手の態度の背景にある状況や感情を理解しようとする姿勢を持つことが重要です。また、時には医療者が自身のメンタルケアを行うことも必要な技能の一つです。自己肯定感を高め、小さな成功体験を積み重ねることが、困難な対人状況におけるレジリエンス(回復力)を高めてくれます。具体的には、できたことに目を向ける思考習慣の形成や、自分を友人のように思いやる「セルフコンパッション」の実践が有効です。これらの技術を自信をもって活用できるよう、引き続き研鑽を重ねたいとまとめてくださいました。
福西先生、2か月間の研修お疲れ様でした!
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