後期研修医の鈴木です。
 当科で3か月の研修を修了された、藤田医科大学総合診療プログラム専攻医の木山先生が最終発表を行ってくださいました。今回は、総合診療医の視点から当科で学んだ「連携医療を学ぶ意義と退院調整のアプローチ」について振り返りと考察を共有していただきました。

※症例の詳細については、個人が特定できないよう、適宜修正を加えています。

総合診療医が連携医療を学ぶ意義と実践

 木山先生は研修開始当初、当科の特徴である「連携医療」の具体的な役割や学ぶ意味を模索されていました。急性期病院では肺炎や尿路感染症などの治療が終了した後も、食事が摂れない、ADL(日常生活動作)が低下している、家族の不安が強いといった理由でスムーズに退院調整が進まない場面に多く遭遇します。こうした背景を踏まえ、木山先生は当科での実際の受け入れ症例を振り返りながら、退院調整における課題と具体的なアプローチを分析されました。

退院調整における課題と制度的背景

 木山先生が提示された症例は、独居でADL自立だった70代の方です。自宅で倒れているところを発見され、脱水や褥瘡、肺炎の治療目的で入院となりました。入院後に脳梗塞の再発(再発脳梗塞)が判明し、急性期治療を行った後に当科へ転科となりました。
 転科初日に木山先生は、本人からのニーズ聴取、リハビリテーションスタッフへの回復見込みの確認、医療ソーシャルワーカー(MSW)との情報共有を行い、回復期リハビリテーション病院へ転院する方針を決定しました。転科当日から調整を開始したものの、結果として転科から転院受け入れまでに約1ヶ月、救急搬送時からは約2ヶ月を要しました。

 この背景には、回復期リハビリテーション病院における診療報酬の制度的評価が関係しています。回復期病棟では、FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価表)と呼ばれるADL評価指標(18項目、18〜126点満点)が用いられます。この指標において「55点以下」の重症患者の割合や、退院時の改善度合いによって病院側の算定区分(入院料)が変動します。本症例では調整開始時点で伝い歩きが可能な程度まで機能が改善していたため、制度上の観点から「早期受入の優先度が高い重症症例」に該当せず、受入調整に時間を要する結果となりました。
 この経験から木山先生は、病状が落ち着いてから退院調整を開始するのでは遅く、入院初日や治療期間の目途が立った段階から早期に調整を開始することの重要性を指摘しました。

リハビリのゴール設定:Hope・Need・Prognosis

 適切なタイミングで退院調整を進めるため、木山先生は抗生剤治療等で投与期間を設定するのと同様に、リハビリテーションにおいても機能到達点としての「ゴール設定」を行う必要性を示しました。その際、以下の3つの要素を包括的に評価することを提案されました。

  • Hope(希望): 患者本人の生きがい、趣味、仕事、生活史などを把握します。情報整理にはICF(国際生活機能分類)の概念を用い、心身機能、活動(運動や調理など)、参加(社会生活や買い物など)に対する阻害要因や背景因子(環境・個人因子)を構造化して評価します。
  • Need(ニーズ・戻り条件): 家族がどの程度までの改善を望んでいるか、あるいは施設や自宅への復帰に必要な最低限の機能条件(階段昇降やトイレ位置などの生活環境を含む)を確認します。家族面談では、何がどこまでできるようになってほしいか、どの程度の介助が可能かを丁寧に聴取します。
  • Prognosis(予後・回復の見込み): 治療終了時点での機能回復度合いを予測します。医師単独での判断は困難であるため、リハビリテーション専門スタッフ(セラピスト)と密にコミュニケーションを取り、客観的な見通しを共有することが不可欠です。

これら3つの要素を平行して評価することで、「予定通り自宅復帰を目指す」「回復期病院への転院挟む」「介護保険サービスや訪問診療を導入して自宅のニーズを下げる」「施設入所を検討する」といった方向性を早期に見極めることが可能になります。

医療チームおよび急性期診療への貢献

 総合診療科の特性として、臨床手技や緊急検査の頻度が比較的少ないことを木山先生は挙げました。総合診療医が連携医療や退院調整を積極的に担うことで、患者や家族、MSWと丁寧なコミュニケーションを重ねることができ、対立(コンフリクト)の少ない合意形成を図ることができます。これにより、急性期治療に専念すべき診療科の負担を軽減すると同時に、患者さんの入院期間の短縮を通じて、せん妄や廃用症候群といった機能低下リスクの低減に寄与できるのではないか、と木山先生は指摘しました。

研修を振り返って

 急性期病院、慢性期病院いずれの視点からも、お互いの特徴を把握した医療者が転院調整を行うことは、患者さんと医療機関双方にメリットがあると言えそうです。総合診療を含め、転院調整を専門的に請け負う専門科を設置する流れは、今後より多くの病院に広がっていくかもしれません。木山先生、3か月間の研修お疲れ様でした!

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