後期研修医の鈴木です。
 当科での3か月の研修を終えられた飯塚・頴田病院総合診療プログラム専攻医の山本幸近先生が、これまでの当科での研修を振り返って最終発表をしてくださいました。今回は、緩和ケアや在宅医療の現場で使用頻度の高い皮下投与についての学びを共有してくださいました。

※症例の詳細については、個人が特定できないよう、適宜修正を加えています。

皮下投与の基本原則

 皮下投与の穿刺部位は、腹部、大腿部、上腕外側などが一般的です。教科書的には臀部や背部も選択肢に含まれますが、現場で行われることはあまりありません。背部は患者の手が届きにくいため、認知症の患者さんで自己抜去のリスクを低減できるという利点があるようです。

 投与速度は、持続皮下注射の場合、1時間あたり0.05mLから0.8mLが標準的です。流速が0.5mL/hを超えると、皮下組織での吸収障害や疼痛が生じやすくなるため、注意が必要です。水分投与目的の輸液の場合は、1時間あたり20mLから100mL程度が一般的であり、最大500mLまで可能とされています。ただし、皮下の吸収能力には個人差があるため、患者の皮膚状態を診察しながら調整を行う必要があります。

 薬剤についても、すべての薬剤が皮下投与に適しているわけではありません。皮下投与を選択する際の主要な指標となるのが、浸透圧pHです。

  • 浸透圧: 5%ブドウ糖液や生理食塩水など、等張液が望ましいです。
  • pH: 皮膚への刺激を抑えるため、概ねpH4~9の範囲内であることが求められます。

 飯塚病院の病棟ではこれらの指標に基づいた薬剤一覧が掲示されていますが、参考とする資料によって記載が異なる場合があるため、病院、個人ごとに個別の確認が必要です。

緩和ケア病棟での運用と工夫

 緩和ケア病棟では頻繁にオピオイド(医療用麻薬)の皮下持続投与が行われます。継続的に皮下投与を行う場合、発赤や硬結といった皮膚障害を生じる恐れがあり、硬結が生じると薬剤の吸収が著しく低下するため、投与部位の連日の確認と、異常があった場合の速やかな穿刺部位変更が必要です。

 また、注入に使用するデバイスの選択も、患者の生活の質(QOL)に直結します。

ディスポーザルポンプ(バルーン式など): 軽量で電源も不要なため、トイレへの移動など自立した生活を送る患者に適しています。
・シリンジポンプ(PCAポンプなど): 精密な流量設定が可能ですが、重量があり、薬液の頻繁な交換が必要です。
・リザーバー型ポンプ(CADDポンプなど): 大容量の薬剤を充填でき、交換頻度を減らせるため在宅での利便性が高いのが特徴です。

 さらに、在宅医療の現場では、穿刺回数やデバイスの数を減らし、患者や家族の負担を軽減する目的で、薬剤の混合投与を行う場合があります。例としてオピオイドとハロペリドール(抗精神病薬)やブスコパン(鎮痙薬)などを混合するケースがありますが、ステロイド製剤を含め、配合変化(薬を混ぜることで沈殿や変質が起きること)を起こす組み合わせがあるため、必要に応じて担当の薬剤師さんと確認する必要があります。


研修を振り返ってのまとめ

 内服や血管確保が困難になってしまった患者さんでも、皮下投与によって必要な治療薬を継続することが可能になります。必要な時には自信をもって皮下投与を行えるよう、要件などを今一度確認しておきましょう。

 山本先生、3か月間の研修お疲れ様でした!

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