後期研修医の藤田です。
大手町病院の出口先生が3ヶ月のローテを終えて最終発表してくれました。出口先生は大手町病院で総合診療医とし研修しており、今回当科をローテーションしてくださいました。今回はある患者さんを通して、強いスピリチュアルペインに直面し、対応に苦悩した日々を振り返ってくださいました。
症状のコントロールができない中で
ある入院患者さんで、薬物療法で一定の効果が見られたものの、全身倦怠感や食欲不振などの一部の症状がなかなか改善せず、患者さんからは「辛さ」や「良くならないなら意味がない」といった訴えが出るようになったそうです。吐き気や不快感が増していく中、精神的にも追い詰められていく様子が見られました。
初めて知る「スピリチュアルペイン」
「もう良くならないなら何もしなくていい。生きてても仕方がない。」
この言葉に返す言葉が見つかりませんでした。指導医からは「これはスピリチュアルペインで、自立性の柱が折れた状態でしょう」と指摘され、初めてその言葉を実感として理解したといいます。
「毎日部屋を訪れよう。患者さんが『見捨てられた』と感じないように。」
この言葉を胸に、ただ話し相手になる日々が始まりました。
雑談の中から見えてくる“その人らしさ”
しかし、何を聞いても「やりたいことはない」「会いたい人もいない」。気持ちを前向きにさせる“きっかけ”が何も見つからない――そんな状況に、さらに悩みが深まったと言います。
そんな中、松坂先生から以下のアドバイスをもらったそうです:
- 病状ばかりを聞かず、雑談からライフレビューを試みる
- 周囲の物から会話を広げる
- 無理なく、今を生きている実感を持てる話題を意識する
共感的な姿勢、無条件の関心、そして相手の反応を待つ「沈黙」の価値にも気づいたとのことでした。
文献から得られたヒント
後に、スピリチュアルペインに関する文献を読み漁ったといいます。ある国内インタビュー調査では、以下のような対応が患者さんの気持ちを軽くしたと記されています:
- 病気の話だけでなく、日常や趣味にも丁寧に耳を傾けること
- 「いつでも呼んでください」と声をかける
- 実際に呼べばすぐ来てくれる関係性
- 身体的コントロール喪失への共感と、たとえ無理でも挑戦を支える姿勢
患者さんが「トイレに自分で行けなくなったことの辛さ」を繰り返し話されていたことからも、こうした情報に大きな学びがあったと振り返っていました。
緩和しきれなかった苦痛と、そばにいる意味
薬剤や処置を重ねても、身体症状は徐々に悪化していき、日々「良くならない」「もう何もしなくていい」と訴えられ、そしてついには、「泣きながら、もう死にたい」と語られた場面では
「サポーティブな対応を心がけても、どうにもならない痛みがある。」
と実感されたそうです。その中でも、最後は非薬物的対応を中心に、患者さんの意思に寄り添った形で共に過ごされたそうです。
学びとこれから
最後にこの症例を通じてこのように振り返っていただきました。
- スピリチュアルペインの解決は容易ではない
- しかし、求められているのは**「特別な言葉」ではなく、「変わらない姿勢」**
- 考え方を変えるには、患者さん自身の内的な変化が必要
- その変化を支えるための“関わり方”の引き出しを得た
また、「薬物療法以外の引き出しを持てたことは、今後に大きく活きる」と前向きな言葉で締めくくってくださいました。
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