専攻医の藤田です。
藤田医科大学の田島先生が3ヶ月のローテを終えて最終発表してくれました。目標としていた「緩和ケアの管理」「意思決定支援」「多様な価値観を受け入れること」に関して、それぞれの成長を実感する機会となったとのお言葉をいただきました。
また、今回の発表では、聴覚障害を持つ患者とのコミュニケーションのために学んだ手話の基礎知識についても共有いただけました。医療現場で活用できる手話表現や、手話の種類・歴史について学び、実際の診療でどのように役立てることができるかを教えてくださいました。緩和ケアにおいて、患者との意思疎通を深める手段の一つとして手話の活用が有効であることが実感できる内容でした。
1. 緩和ケアについて
研修開始時には、緩和ケアを必要とする患者の対応について一定の理解を深めることを目標としていました。
- 知識面:レクチャーや指導医のフィードバックを通じて、症状緩和について体系的に学ぶ機会を得た。
- 実践面:多くの患者を担当し、オピオイドの調整や緩和的放射線治療の適応判断などを経験した。
また、緩和ケアの領域では、患者の身体的苦痛だけでなく、精神的・社会的背景も考慮することが重要であり、チーム医療の大切さを再認識されたそうです。
2. 意思決定支援の難しさ
特に意思決定支援に関しては、3か月間で最も成長を実感した分野であったとのことです。
- 従来の考え方:「すべての関係者が納得し、理想的な形で意思決定がなされるべき」と考えていた。
- 緩和ケアでの学び:
- 患者や家族の価値観が多様であり、完全に一致することは少ない。
- 医療者ができることは、「患者の意思を最大限尊重しながら、家族とも調整を行い、最良の選択肢を提示すること」。
- 「最善を尽くすことが大切であり、必ずしも100%の納得を得ることができなくても良い」と考えられるようになった。
特に、認知症患者の意思決定に関わる場面では、医療的な判断だけでなく、経済的・社会的な側面も重要であることを痛感したとのことでした。
3. 多様な価値観を受け入れること
緩和ケアの現場では、患者や家族の価値観が医療者の想定と大きく異なることも多いです。
- 「なぜこの選択をするのか?」と疑問に思うケースもあったが、指導医やチームの意見を聞くことで、「こういう考え方もある」と受け入れられるようになった。
- 患者や家族の背景を深く理解することで、医療的な介入のあり方が変わることを学んだ。
- また、普段接することのなかった医療者との関わりを通じて、視野を広げる機会にもなった
とのことでした。
手話の学習と医療現場での活用
手話の基本知識
今回のローテーションでは、聴覚障害を持つ患者とコミュニケーションを取る必要がある場面もあり、基本的な手話を学び、診療に活かした経験についても共有がありました。
- 手話の種類
- 日本手話:音声言語を獲得する前に失聴した人が使う。日本語とは文法が異なり、表情や身体の動きも用いる。
- 日本語対応手話:日本語を習得した後に失聴した人が使う。日本語の文法に近く、手の動きが中心。
- 中間型手話:地域や個人によって異なる、独自の手話表現を用いることも多い。
- 手話を使う人の数
- 日本国内で約8万人が手話を使用しているとされる。
- 手話通訳者は全国で約4,000人、福岡県内では138人が登録されている。
医療現場で役立つ手話
実際に診察で使用した手話の一部を紹介してくださいました
- 医師:「脈を測るような動作」+「グッと握る」
- 緩和ケア:「体をさすったり揉んだりするような動作」
- 調子はどうですか?:「手を上げ下げして顔をひねる」
- 検査:「目線を向けて測定するような動作」
- 診察:「聴診器を当てるような動作」
- 吐き気:「口元に手をあて、胸をさする」
- 痛み:「手をひねるような動作」
- 倦怠感:「体全体が重いことを示すような動作」
- 薬:「薬指をこすり合わせる」
- おいしい:「顎をさする」
このような基本的な手話を実際に診療で活用し、患者とのコミュニケーションを取ることで、患者の安心感が増し、信頼関係の構築につながったと報告されました。
また、飯塚病院内にも手話対応可能な看護師が1名おり、必要に応じて連携を取ることができるとのことです。緩和医療学会もYouTubeでろう者の緩和ケアに関する動画をUpされておりますので、もしよければご参照ください!
まとめ
今回のローテーションでは、症状緩和、意思決定支援、多様な価値観を受け入れること、手話でのコミュニケーションなど、幅広い学びが得られました。今後の診療においても活かせる貴重な経験となったとのことです。
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