専攻医の藤田です。
飯塚病院の初期研修医の小磯先生がローテを終えて最終発表してくれました。
「オピオイドを怖がらずに使えるようになりたい」「患者さんとのコミュニケーションスキルを学びたい」「予後推定をできるようになりたい」といった目標を掲げて当科で研修を行なってくださいました。
1ヶ月と限られた期間の中で、学んだことを発表してくださいました。
研修前に立てた目標
ローテーション開始時に設定した3つの目標は以下の通りでした。
- オピオイドを適切に使えるようになる
- 患者や家族とのコミュニケーションを学ぶ
- 予後推定を正しく行えるようになる
この目標を念頭に置きながら、実際にどのような症例を経験し、どのような学びを得たのでしょうか?
症例紹介と面談の振り返り
*症例は個人情報保護の観点から藤田が一部変更を加えております
面談の準備
患者さんの状態変化を踏まえ、家族との面談を実施しました。
事前に 「3ステージプロトコール」 で面談の流れを参考にしながら、コミュニケーションにおいては、NURSEの中でも以下のポイントを意識しました。
・承認(Respect):家族の思いや行動を尊重する
・探索(Explore):家族が抱えている疑問や不安を掘り下げる
・支持(Support):今後の方針や選択肢を具体的に示す
実際の面談の振り返り
面談が終わった後に、自分の言葉かけともっとこう話せば良かったという振り返りをしてくれました。その一部を紹介します。
① 家族の想いを引き出す
「入院してから今日まで、様子はいかがですか?」と尋ねると、「弱ってきている」と家族が感じていることがわかりました。しかし、ここで 「ご家族さんが来てくれて安心されていると思います」 というリスペクトの言葉をかけられなかったのが反省点でした。
治療に関する質問に対応する
「〜〜をした方がいいのでは?」という家族の意向に対し、
「できなくはないですが、負担がかかる可能性があります」と回答。
しかし、「できなくはない」という曖昧な言葉ではなく、 「治療による負担」 を明確に伝えた方が良かったのでは?という振り返りがありました。
③ 予後の推定について話す
「あとどれくらい生きられますか?」という家族の質問に対して、
「短い月単位と考えています」と伝達。
しかし、「申し上げにくいのですが…」と枕詞を入れるべきだった という反省点もありました。
④ 家族の気にしていることを察する
「きつそう」という家族の発言が 複数回 繰り返されたことに注目。
「同じ話題を何回か出すのは、それだけ気にしていること」 → 2回目はより具体的に情報を提供すべきだった!という学びを得ました。
そのほかの面談での具体的な学び
そのほかには以下のような学びがあったようです。
①家族が繰り返し話すことは、その人にとって重要なテーマ
→ 2回目以降はより具体的に対応すべき!
② 医学的説明は簡潔に!話しすぎると伝わらない
→ 「50%ルール」を意識して、家族にも話す機会を作る *医療者が面談の会話の50%以上話さないこと
③ セッティングの重要性
→ 面談前に ティッシュの準備 を忘れてしまった→ 次回は徹底する!
④ 家族の気持ちを言葉にすることが大切
→ 「大切に思っているお気持ちが、すごく伝わってきます」など、共感の表現を意識する
臨床面での疑問:「点滴は本当に延命効果があるのか?」
「終末期のがん患者さんに点滴をすることで、生命予後は延びるのか?」
この疑問を持ち、論文を調べてくれました。
結論:点滴による明確な延命効果はない
生命予後を延ばすエビデンスは乏しい。ただ、患者や家族の「安心感」を高める可能性がある。
→ 「少量でも点滴がつながっていることが家族の精神的ケアにつながるかもしれない」 という視点も大切だと学びました。
なお、この件に関しては指導医からもスライドを共有いただきました。
元文献のPMIDは以下になりますので、ぜひご確認いただけますと幸いです。
研修のまとめ
3週間の研修を通じて、以下のことを学んでくださったようです
・ オピオイドの使い方
→ 実際に導入する症例は少なかったが、使い方の理論を学べた
・予後推定のスキル
→ ツールを活用しながら、身体所見から予後を考える視点を得た
・ コミュニケーションの重要性
→ NURSEの中でも「承認」「探索」「支持」 を意識して話す!
→ 反省点も多かったが、実際にやってみたからこそ成長を実感できた
・ 「医学的知識」だけでなく「家族の気持ち」を理解することが大切
→ 医療の視点と、患者・家族の視点の両方を持つことが求められる
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