後期研修医の鈴木です。
愛媛県立中央病院から当科へ1ヶ月の研修に来られていた品川先生が、これまでの当科での研修を振り返って最終発表をしてくださいました。今回は、病棟で尿閉に対応された際の学びを共有してくださいました。
緩和ケア病棟で出会った「尿閉」
<症例の概要>
- 70代後半男性、前立腺癌に対して長年の治療歴がある方。
- 吐き気、食欲不振の症状緩和目的で入院されたが、入院中に尿閉を来たした。
- 尿道狭窄がありカテーテル挿入が困難であり、泌尿器科で尿道拡張施行後、カテーテルを留置した。
- 尿閉の基本病理:
- 排尿は「蓄尿」機能と「排尿」機能の連携が必要。いずれかの機能不全で尿閉を生じる。
- 神経支配:副交感神経(骨盤神経)、交感神経(下腹神経)、体性神経(陰部神経)
- 原因として考慮すべき点:
- がん自体の影響(骨盤腫瘍、神経浸潤)
- 治療歴(手術・放射線)による器質的障害
- 薬剤性(オピオイド、抗コリン薬 など)
- 便秘やフレイルなどの身体的要因
今回は、上記のような複数の原因が影響しあい、尿閉を生じたと推測されます。
オピオイド関連の尿閉と付随する問題
- オピオイド経口投与での尿閉発生頻度は1〜3%とされる。
- 脊髄くも膜下投与では最大70%とされることもある。
- 治療は以下が中心:
- αブロッカー投与
- 自己導尿/カテーテル留置
- オピオイドの変更が尿閉を改善するエビデンスはない。
今回の症例で特に問題になったのが、バルーンカテーテル留置による強い不快感でした。
カテーテルによる尿道刺激症状は、せん妄や興奮の引き金にもなります。
対応としてはNSAIDs坐薬(ボルタレン等)などの投薬治療や、“Nカテーテル”(局所麻酔注入可能カテ)への変更で刺激を軽減することが考慮されます。
研修を振り返ってのまとめ
今回の研修を振り返る中で、品川先生は以下のような学びを得られたと語られました。
- 病状説明や意思決定支援の機会に多く関わり、面談スキルを実践的に学べた
- メサペインの使用など、専門的な薬物療法を経験することができた
- タイミングを逃さず退院支援を行うことの難しさを経験した
- 緩和ケアがいかに“全科横断的”な学問であるかを実感した
緩和ケアで学ぶ技術は、“病気”に限らず、“人”に向き合う全ての医療者に通じるスキルであると、1ヶ月の研修を総括してまとめてくださいました。品川先生、研修お疲れ様でした!
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