専攻医の藤田です。
飯塚病院、ハートネット病院、JCHO九州病院、浜の町病院が協力して月1回の勉強会を開催しています。今回プレゼンターの浜の町病院の永山先生で、「物語<ナラティブ>の中の緩和ケア」でした。

ナラティブとは?

ナラティブは直訳すると「物語」ですが、単なるストーリーではなく、以下のような特徴を持ちます。
・出来事や体験を、関係性や時間の流れを踏まえて語るもの
・語り手と聞き手の関係性や相互作用を含むもの
・過去の整理と未来の展望を生み出す力を持つもの
この「ナラティブ」という視点から、映画や漫画、文学、音楽などの作品が緩和ケアや医療とどのように関わっているのかを探っていきます。

医療マンガの中のナラティブ  

病理医を主人公にしたマンガ『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』(原作:草水敏・漫画:恵三朗、講談社刊)には、緩和ケアを学ぶ研修医のエピソードが描かれています。患者の人生や価値観に寄り添うことの難しさと大切さが浮き彫りになっており、特に患者の喪失体験を疑似的に体験するゲームのシーンは、患者の選択を尊重する姿勢を学ぶ教材として有用です。

絵本、映画、音楽のなかのナラティブ  

『わすれられないおくりもの』(作・絵:スーザン・バーレイ、訳:小川仁央、評論社刊)では、年老いたアナグマが亡くなった後に、仲間の動物たちが彼とのエピソードを振り返りながら、その教えを引き継いでいく様子が描かれています。その姿はまるでグループセラピーや遺族会のようでもあり、緩和ケアにおいて喪失とそこからの回復が重要なテーマであることを改めて実感させます。
映画『幸福な食卓』(監督:小松隆志、脚本:長谷川康夫、原作:瀬尾まいこ、配給:松竹、2007年)では、喪失の悲しみと向き合いながらも、新たな始まりを感じさせる瞬間が描かれています。また、主題歌であるMr.Childrenの『くるみ』(詞・曲:桜井和寿、2003年)も、喪失を体験した人の心の動きを繊細に表現しており、音楽が持つ癒しの力を感じさせます。

ナラティブと緩和ケア:ケアの力を育む物語  

ナラティブに触れることは、緩和ケアの現場においてさまざまな形で役立ちます。
<ナラティブに触れるメリット>  
・物語を通じて、ケアの視点や関わり方を学ぶことができる
・患者の語る「人生の物語」に耳を傾けることで、患者は「自分の存在が認められている」
 と感じられるようになる
・喪失を経験した人々の物語に触れることで、その悲しみに寄り添う姿勢が養われる
・医療者自身が、患者の死などの喪失に向き合い、感情を整理する助けとなる
・医療者同士でナラティブを共有することで、共感し合い、孤独やバーンアウトを防ぐことができる
・映画や漫画、音楽を教材として用いることで、知識だけでは得られない深い学びにつながる
・作品について語り合うことを通じて、多様な価値観や視点を共有する機会となる
・言語化しづらい感情を表現することは、医療者や患者双方の心を癒す力になる

最後に  

こうしてナラティブのメリットを列記すると、「緩和ケアに役立つから学ぶべきもの」という実利的な視点になりがちです。しかし、それだけではナラティブの本質を捉えきれません。患者の語りや創作物に触れ、自身の物語を再構成すること。それは、医療者としての在り方を形づくる礎となり、心の栄養となり、時には生き方を変えるきっかけにもなるかもしれません。ナラティブに触れることは、ケアの技術を磨くだけではなく、人としての深みを育む営みなのです。
みなさんも、さまざまなナラティブに触れてみてください。そして、おすすめの作品があればぜひ教えてください。

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浜の町病院は、福岡の中心・天神の北に位置する460床規模の総合病院です。
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