スタッフの石上です。

総合診療科から来られている宮本先生がローテ3ヶ月を終えて最終発表してくれました。

彼のメインのテーマは食べられない人への支援でした。

“食べられない”はもちろん医学的に可逆性のあるものを抑えるのですが、不可逆的な状態もよくあります。

  • 認知症
  • フレイルによる嚥下機能低下 
  • パーキンソン症候群

など、急性期病院でも”食べられない”と向き合うことは非常に多いです。

例えば以下のような話をされることがあります。

こうしたコミュニケーションにどう対応するのか難しさを感じていたとのことです。

緩和ケア科でのコミュニケーションで気をつけていることの例として以下のようなことがあります。

・認知症の末期であることの病状説明(Trajectoryを含めて説明する)

 (認知症は物忘れの頭の病気であり、食べられないことが認知症の進行だと思っていない人も多い)

・Needという言葉は使わない。(〇〇が必要です)

Kruser JM, Clapp JT, Arnold RM. Reconsidering the Language of Serious Illness. JAMA. Published online 2023.

こちらの論文でも挙げられるように、食べられない状況(stage1)と治療をするかどうか(stage3)が混ざったような言葉を使うとケアのゴールの話し合いとしては混乱しやすくなります。

Needは本来必要なものが欠けているという話し方になりますので、不可逆的な状態になったときにはあまりいい言葉ではありません。

医療者は、経管栄養が生きるために必要ですが、あなたの場合は不要だと思います。と言われると

家族はなんで?必要なものをやってくれないの?と対立することがあります。

“必要です”という言葉は無意識のうちに使ってしまいやすいですが、使わない方が良いでしょう。

・できないことだけでなくできることを話す 

・食べられない人へのケアの選択肢としてのComfort feeding

Eric J. palecek, et al. Comfort Feeding Only: A Proposal to Bring Clarity to Decision- Making Regarding Difficulty with Eating for Persons with Advanced Dementia. J Am Geriatr Soc. 2010 March ; 58(3): 580–584.

栄養を完全に摂ることはできなくても、楽しみのための食事は摂れることも多いです。

家族に本人のケアに参加してもらい、家族が作ってこられたものを食べる、Time limited trialを行うことも食べさせてあげたいという希望に対する方法として有用です。

色々ヒントがあったようでよかったです。

またガイドラインとしても、価値観にあった治療として、患者の価値観を家族と共有するステップの重要性を認識してくれたとのことでした。

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/guideline.html

非がん患者の緩和ケアの場合、特に”食べられない”に対して向き合うことは重要です。

総合診療でも、”食べられない”可逆的な要因を探し終わったら、あまりその後話がしっかりされてないこともあります。価値観に合った治療を行うためには、ACPや話し方がとても重要で、どこに行っても必要な知識やコミュニケーションだと思います。

今後の診療に活かしてもらえると嬉しいです。3ヶ月ローテお疲れ様でした! 

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