家庭医療専門医のTGです。

前回の投稿では、緩和ケアを学ぶ家庭医が、育児休業を取得するまでの流れと、出産後に赤ちゃんが自宅にやってくるまでをお届けしました。

前編を公開した後に、多くの方からブログ記事の感想が寄せられました。

その大半は「2カ月ももらえてすごい!」との反応で、とりわけ奥様のご友人たちから概ね、好意的なリアクションをいただくことができました。期間が全てではないですが、このような声もあるようです。

【男性育休】男性が理想とする取得期間は「1週間」が最多、女性はどう考えている?

https://news.mynavi.jp/article/20220603-2357355/

まだまだ育休取得が一般的でない中で、それが当たり前になることを祈るばかりです。

今回は「育児休業で40歳過ぎたオッサン家庭医が何をしていたのか」を詳しくリポートいたします。

育児休業スタート!

NICUで10日間の入院生活を乗り越えた次男がわが家にやってきました。

まずTGに課せられた使命は、赤ちゃんではなく長男のお世話でした。

1日の流れは?

実際の1日の流れです。大ざっぱに、以下の2パターンがあります。

①平日:長男の学校の送り迎えがあるパターン
②土曜・祝日:学校休みで長男のお相手
メインのパターン

長男(7歳)は義務教育を受けているため、当然、毎日学校に通っています。単身赴任中は奥様に任せきりでしたが、新生児のお世話とともに、まず担った役割は長男のお世話全般です。

最初はやるべきことがわからず、ToDoリストを作成して参考にしながら動きましたが、3週間ほどで身体が覚えました。

長男のお世話項目リスト

小学校は少し離れた学校に通わせているため、自動車通勤です。

朝起こして、着替えさせ、朝食をとらせ、車で送ります。宿題をやったか、荷物を詰めたか、その日の習い事の準備はできているか、など確認して出発。

無事に送り届けて、自宅に戻ると赤ちゃんのお世話がメインです。

「抱き癖」がついた赤ちゃんは布団に寝かせると火がついたように泣きました…

奥様が休めるように赤ちゃんの世話を交代したり、買い物したりなどタスクをこなしました。お昼の時間帯は、夜間に備えて順番に仮眠を取ることも重要でした。

そうしているうちに、長男のお迎えの時間です。帰りの車内では、学校でどんなことがあったのか、教えてもらいました。これもまた貴重な時間でした。

夜は早めに夕飯を済ませ、20時には長男を寝かしつけていました。

この後、赤ちゃんの寝かしつけ、夜泣きへの対応が始まります。この段階までに、コンディションを整えておけるかどうかが、翌日の疲労具合を決定します。以下で詳しく触れます。

育児休業で経験した3つの役割とは?

育休中のTGの役割を整理してみました。主に以下の3つの役割を担いました。

①「夫」として妻をサポートしつつ主体的に育児に関わる
②「父親」として長男との時間を多く作る
③「患者家族」として医療者と向き合う

其の一:「夫」…奥様をサポートしつつ、主体的に育児に関わる

母乳を与える以外の役割を全て担いました。

とはいえ、奥様に頼る部分もあり、うまく意思疎通をうまくとって、新生児期〜乳児の混乱を乗り切りました。幸運なことに、奥様の実家にいたため、義理の両親から家事のサポートを受けることができました。

夫婦で協力して、赤ちゃんが寝ている時間に、順番にお風呂に入ったり食事をとったり長男を寝かしつけたり、と臨機応変に対応しました。

一番の課題は夜間の赤ちゃんへのケアをどうするか?ということでした。

以下のツイートを参考に、夜間はシフト制にして担当する時間を決め、お互いに睡眠時間を確保しました。

余談ですが、Twitterには子育て世代の生々しい悩み、愚痴、なかにはTipsを紹介してくれる内容があり助けられました。後半で番外編として、TGが参考にしたTwitterの記事をご紹介いたします。

きっちり鑑別!赤ちゃんが泣く三大原因と対策

赤ちゃんは時を選ばず、泣きます。

育休当初、赤ちゃんが泣いたときには、さながら症状を持った患者さんを診察する時のように、「何が原因か?」鑑別疾患を挙げました。大抵、以下の3つのうちのどれかです。

  1. おなかが減っている → ミルクを作って与える
  2. 尿・便をして気持ち悪い → オムツを替える
  3. 眠いけど上手く眠れない → 抱っこをしてあやす

ほかに、特に理由はない、ということもあったと思いますが、大抵はいずれかのアプローチで泣き止む→寝かせることができました。

参考にした記事

男性育休のネット記事やブログが多く書かれているので、そちらを参考にしました。

育休を経験された方のほぼ全ては「必ず取得すべき!」と強調しています。

これを読んだ方、男女を問わず育休取得を強くオススメします – estie inside blog

https://inside.estie.co.jp/entry/2022/04/28/140000

きちんと奥様への感謝を綴っています(これは大事…)。

「育児は”手伝う”ものじゃない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/caf72c0c8dd52e3ffc4a3558d18463e0e2796b45?page=1

耳が痛いです…。

作ったミルクは2時間で廃棄しなければいけない、と言われていますが、ぶっちゃけ少し過ぎてもあげていました(ブログや子育て経験者の多くが実は同じだったと聞いて安心できました💦)。

其の二:「父親」…長男との時間を多く作る

7歳の長男とまとまって過ごせるのも最後の機会と考えました。なので、赤ちゃんの世話以外の時間は長男の求めるまま、遊びに費やしました。

庭でドッジボールしたり、公園でバスケットボールしたり、釣りに行ったり、と本当に貴重な時間でした。

念願だった息子との釣りに行けたのがハイライトでした。

近所のイノー(珊瑚礁に囲まれた浅い海)で従兄弟と釣りへ
従兄弟のお兄ちゃんが釣り上げたルリスズメダイ

其の三:「患者家族」…医療を受ける立場になる

当初は予想していませんでしたが、奥様、赤ちゃんともに医療を受ける立場となり、思いがけず「患者家族」となりました。

奥様の帝王切開に加え、出生後に新生児一過性多呼吸のため、出産したクリニックからNICUへ赤ちゃんが転院搬送されました。

普段は患者さんやご家族に医師として向き合いますが、今回は「患者家族」として医療者と向き合う機会をいただきました。

「夫が医師」ということは医療者間で真っ先に共有されているのか、NICUでの担当医師からの説明では真っ先に「ご専門は?」と聴かれました。「医師ならわかるだろう」という前提で、専門用語を交え詳細な経過報告をしていただきました。

待ち時間の不安な気持ち、患者に会えないツラさなど、実際に患者家族の立場になって知ることができました。

他にもこちらには書けないことも多く経験しました。医療者には当たり前でも、患者目線では「えっ?」と驚くことがたくさんあるなと気づけました。

育休でなにが大変だったか?

一番大変なのは2〜3時間おきに母乳をあげていた奥様であることは当然として、サポートする身の夫として大変と感じたことを挙げてみます。以下の3つでした。

  1. まとまった睡眠時間がとれない
  2. 先が予測できない
  3. 上の子(長男)が孤独感を募らせる

まとまった睡眠時間がとれない

毎日が当直&当直明けのようでした。初期研修時代を思い出しました。40歳を超えて、という枕詞を安易に使うべきではないかもしれませんが、体調&メンタル&血圧管理において、睡眠時間確保を最優先としていた41歳の身にはかなりこたえました。長男の送り迎えで自動車運転があったため、夜間のシフトは睡眠確保できるように奥様が配慮してくれていました。

先が予測できない

赤ちゃんの機嫌に合わせて1日の行動が規定されるため、あらかじめスケジュールを組んで行動することができませんでした。寝てくれていれば、少しその場を離れることはできるものの、泣いたらミルク/オムツ交換/抱っこのいずれかが必要で最低1人、ミルク作成はできれば2人で分担がベストでした。

上の子が孤独感を募らせる

これは予想外でした。長く一人っ子で両親からの愛を独占し、かつ祖父母からも寵愛され、さらに同居する従兄弟からも可愛がられていた長男でした。ここまで恵まれた環境の子どもがいるだろうか?という贅沢な環境の長男が、いざ次男が産まれ、両親がそちらにかかりきりになると

「もう僕のことなんかどうでもいいんだね…」

と拗ね始めました。もちろん、放っておいたわけではなく、かわらず溺愛していましたが、自分に集まる関心の多くが弟に向いてしまったために本人の戸惑いも大きかったようでした。意識的に声かけをするなどしてフォローしましたが、バランスを取るのが難しかったです。

(今では一緒に赤ちゃんの世話もしてくれるようになっていて、ピークは過ぎたようです)

番外編①:Twitterで学ぶ育児

多くの方が育児についてTwitterでつぶやいています。皆さん、育児に対して思うところがたくさんあるためか、育児ネタはバズったり、炎上したりしやすいネタです。

すれ違う夫婦の価値観を理解したり、大変な育児を乗り越えるためのTipsも多くありました。TGが心に引っかかったツイートをご紹介いたします。

育児に対する妻の嘆き

育児関連のツイートの多くがこちらです。育児は夫婦の価値観の違いが最も現れる場面かもしれません。なかには夫婦関係の危機を心配させる内容も……。

こちらのツイートが「育児の愚痴をTwitterに吐きだす理由」を的確に説明してくれています。

一方で、育休に入った夫がツラさを吐露するエピソードもあります。

「イクメン」という響きがもつ欺瞞、男女の役割の非対称性について、こちらの児童精神科医の先生が解説してくれています。

育児のいい面、大変な面も共有できてこそのパートナーということでしょう。

イクメンに対する風当たり

男性育休に対して揶揄する向きもまだまだそれなりにありそうです。

そんななか、素敵な上司からかけられた言葉にほっこりというエピソードも。

男性の育休が当たり前となるために、経験した人が次の世代に繋いでいくことが大事ですね。

おまけ:育児ほっこりイラスト&アニメ

おまけです。単純におもしろかった「赤ちゃんのオムツ替えコレクション」。

沐浴の様子が可愛らしいアニメーションで表現されています☺️

番外編②:育児における参考図書

子育てのTipsを紹介してくれる書籍やYoutube動画がたくさんあり有用でした。

こちらの本をKindleで購入して読み込みました。子どもの生態が理解できて、心に余裕ができることもありました。読みやすいので書店でパラパラ眺めてみるとよいかもしれません。

まとめ:育休で得られたこと

以上、育休での経験を詰め込んでみました。

男性による多くの育休体験ブログにも書かれていますが、育休で得られたものは以下の2点に集約されます。

①赤ちゃんを含めて、家族と一緒に長い時間を過ごせたこと
②新生児の大変な時期を夫婦で乗り越えられたこと(大変な時期はまだまだ続く…)

特に夫婦で育児の喜びや大変さを共有できたことが何より代えがたい財産となりました。

職場が許せば、全ての資格あるパパ(当然ママも)は育児休業を取得できるといいなと願っております。

最後に、育休終わってから出会った、琴線に触れた言葉を紹介して締めくくりといたします。

【人生は5つのボールのジャグリング】

人生は「仕事」「家族」「健康」「友人」そして「自分の心」という5つのボールのジャグリングだと想像してください。

このうち、「仕事」だけはゴムボール。あとはガラスのボールです。

仕事のボールだけは落としても跳ね返ってきますが、それ以外はそうはいきません。

壊れてしまうでしょう。

だからこそ、私たちはうまくバランスを取りながら進んで行かなければなりません。

ブライアン・ダイソン(コカ・コーラ元CEO)

重ね重ね、働きやすい(休みを取りやすい)職場を長い時間をかけて作りあげて下さったボスとメンバーの皆さんに感謝いたします(o_ _)o

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