飯塚病院、福岡ハートネット病院、JCHO九州病院、浜の町病院では、PaCSERLI 福岡緩和医療専門医合同プログラムの取組みとして月1回の勉強会を開催しています。
今回は「看護小規模多機能型居宅介護(以下:看多機)を活用した在宅看取り」について、福岡ハートネット病院 田口医師にご講演いただきました。このブログではその内容をご紹介します!
背景と症例紹介
心不全患者さんは終末期においても高度な医療的管理が必要ですが、緩和ケア病棟に入院できません。心不全患者さんの2/3は集中治療室を含む病院で最期を迎えることが知られており、自宅での看取りはなかなか難しくなっています。
重度の弁膜症を持つ、慢性心不全の増悪を繰り返していたAさん。
弁膜症に対する手術も考えられましたが、合併症のため手術はできなくなり、症状緩和治療の方針となりました。
それまで入退院を繰り返されていたこともあって、Aさんとご家族は「できる限り自宅で家族と過ごしたい!」という希望がありました。一方で、主介護者であるご家族はご高齢で、「自宅で24時間介護し続けるのは心配…」と不安を吐露されていました。
最期の療養の場所としていくつか考えを巡らせましたが、どれも決定打にかけるものでした。
緩和ケア病床 | 地域包括ケア病床 | 自宅 | 住宅型老人ホーム |
み。30,60日で減算。 |
住み慣れた自宅で過ごしたい…けれど24時間ずっと介護するのは負担が大きい…その2つの思いに応えることができるのが、自宅近くにある「看多機」との連携でした。
幸運なことに、その「看多機」はこれまで介入していた訪問看護ステーションと関連のある施設でした。
心不全悪化で医療・介護必要度が急上昇するも、柔軟に看多機を活用!
退院後すぐに転倒や呼吸困難があり、頻回に緊急訪問・往診を必要としました。ですが、Aさんは自宅から離れたくない…。妻の疲労感も高まっていて、緊急カンファレンスを行い看多機の宿泊利用を開始!
看多機には看護師による頻回の評価も可能で、スムーズに医療用麻薬の開始・調整が可能でした。また胸腔穿刺が必要になった際も、自宅よりもスペースも広く、より安全な観察が可能でした。
そうするうちに、お元気になられたAさん。連休を利用して遠方の親戚が多数あつまることになり、そのタイミングで一度自宅に戻られました。自宅では家族や親戚ととてもよい時間を過ごされていました。
親戚の集まりがあった数日後、状態が悪化し看多機の宿泊利用を再開することに。血液検査では循環不全の所見で治療困難な状態でした。医療用麻薬や緩和的鎮静を行いながら、穏やかに最期のときを迎えられました。
亡くなったあと、ご家族は次のようにお話されていました。
「最初はためらいがあったけれど、看多機〇〇の皆さんにお願いして本当に良かったです。お泊まりの間に家のこともできたし、体調が良いときは自宅で一緒に過ごすこともできました。」
看多機が可能にした、心不全在宅看取り
心不全は状態の悪化によって急激に医療必要度・介護必要度が高まります。一方で、治療が奏功すれば速やかにもとの状態に戻ります。そんな病態に、宿泊・訪問・通いを柔軟に組み合わせることのできる看多機はベストマッチだったと考えます。
また看多機では医療用麻薬や在宅酸素療法も可能でした。夜間も必要に応じて、訪問看護師と連携をすることが可能で、安心して過ごすことができたようです
このケースプレゼンテーション後のディスカッションでは、看多機との連携における課題で次のような点が話題になりました。
在宅医療における看多機との連携における課題
- 施設数の少なさ(福岡市内でも10か所)
- サービス提供地域の制限(原則事業所のある市町村内)
- 看護師の人材確保・夜間対応の限界
- 「ずっと泊まれる」わけではないという制約

今後、心不全の方が最期を過ごす場所はどのように整備されるといいでしょうね。

心不全にも様々な病態があります。緩和ケア病床のような専門職があつまる場所がマッチする方も、ホスピス住宅や介護医療院のような場所がマッチする方もいます。場所や病名にこだわらず、地域で柔軟にリソースを活用できるようになるといいですね。
まとめ
今回のディスカッションを通じた学びです。
- 看多機は訪問・通い・宿泊サービスを柔軟に調整することで、非がん疾患の在宅医療と親和性が高い
- 自宅や病院といった「場所」にこだわらず、「地域」で過ごすという視点がある
- 施設の特徴を理解することは、終末期のケアの質向上につながる
心不全はがんと比較して在宅緩和ケアリソースが限られますが、看多機との連携は重要な位置づけになることがわかりました!
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