専攻医の藤田です。
湘南鎌倉総合病院の和田先生が3ヶ月のローテを終えて最終発表してくれました。家庭医と内科医のダブルボード習得を目指しており、両方の視点からの振り返りを行なってくださいました。
家族との意思決定支援の難しさ
1. 「正しい選択」が必ずしも患者の家族に受け入れられるとは限らない
緩和ケアにおいて、医療者は「患者にとって最も適切な方針」を考えます。しかし、その方針が患者の家族にとって受け入れやすいものとは限りません。
- 医学的には治療適応がない状況でも、家族は「何かできることはないのか」と模索する
- 家族の「納得」は、医療者が考える「最善の方針」と一致しないことが多い
- 本人の意思を尊重したい気持ちと、「できることをすべてやりたい」という家族の感情の間で葛藤が生じる
このような状況では、単に医学的な説明を繰り返すだけでは解決せず、家族の気持ちを受け止めながら対話を続けることが求められます。
2. 家族の背景を理解することの重要性
家族がなぜその選択を望むのかを理解することは、意思決定支援において非常に重要です。
- 家族にとっての患者の存在はどういうものか
- 家族にとって、患者は単なる「病者」ではなく、人生を共にしてきた大切な存在
- 家族構成や経済的・精神的な依存関係が、意思決定に影響を与えることがある
- 家族自身の喪失への不安を理解する
- 「患者のため」と言いながらも、実際には「家族自身の心の整理がつかない」というケースもある
- 医療的な選択というより、「家族自身の生き方」に関わる問題として考えられる
特に、家族の中に「患者がいない生活を想像できない」人がいる場合、意思決定は非常に難しくなることがあります。
3. キーパーソンの設定と関わり方
家族全員が同じ考えを持っているわけではなく、誰が意思決定の中心になるかによって、話の進め方が大きく変わります。
- 医学的判断を冷静に受け止める家族と、感情的な反応が強い家族がいる場合
- 感情的な反応が強い家族を無理に説得するのではなく、冷静な家族をキーパーソンとして調整役にする
- 意思決定の場では、冷静な家族を中心に進めることで、感情的対立を避ける
- 意思決定支援は一度で終わるものではない
- 1回の面談で決着がつくことはほとんどない
- 「家族の心が追いつくのを待つ」ことも重要なプロセスの一部
4. 具体的な対応と工夫
① 家族と対話を続ける
意思決定を進めるうえで、「家族の意向に耳を傾ける」ことは不可欠です。
- 家族にとって患者はどのような存在かを聞く
- 「○○さんにとって、ご家族はどんな人でしたか?」
- 「どんな思い出がありますか?」
- こうした質問を通じて、家族が患者との関係を客観的に振り返る機会を作る
- 家族自身の気持ちを整理してもらう
- 「もし○○さんがここにいて、今の状況を見ていたら、なんと言うと思いますか?」
- 家族自身に問いかけることで、患者本人の意向を考えるきっかけを提供する
② 「納得」のプロセスを支える
- 「できることをやった」という実感を持たせることで、後悔を減らす
- 時間をかけてゆっくり話し、考える時間を提供する
5. まとめ:医学的最適解だけではなく、家族の納得も重視する
今回のケースを通じて、医学的な正しさだけではなく、家族が納得できるプロセスを重視することが意思決定支援において重要であると実感しました。
- 家族の感情的な反応には、「患者を失うことへの不安」が根底にあることが多い
- 医学的説明だけでは不十分であり、対話を通じて家族の気持ちを整理する時間が必要
- キーパーソンの設定や、家族ごとの背景を考慮することが、スムーズな意思決定につながる
緩和ケアにおける意思決定支援は、医学的な判断だけでなく、家族が「自分たちにとって最善だった」と思える形で進めることが重要であると学んだ発表でした。
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