後期研修医の藤田です。
東京ベイ浦安市川医療センターの永井先生が6週間のローテを終えて最終発表してくださいました。永井先生は総合内科として研修しており、今回当科をローテーションしてくださいました。今回は口数の少ない患者・家族への対応をテーマに発表してくださいました。
「幸せな最期」とは何か?
冒頭では、「自分にとっての幸せな最期」という問いを提示し、「後悔のないケア、ケアのゴールの徹底」が理想であると語りました。
「本人・家族が“後悔していない”と思えることが、幸せな最期の一つの形」
この理念のもと、先生が直面した現実は、「ほとんど話をしてくれないご家族との面談」でした。
面談における衝撃:「話さない」家族の背景
担当した症例は、病状により意思疎通が困難となった患者さんで、主に面談を行ったのはその奥様でした。事前の電話連絡では驚くほど詳細に病歴を説明し、明確にACPにも触れていたのですが、いざ面談に臨むと
- 表情が乏しい
- 目を合わせない
- 最低限の相づちのみ
- こちらからの問いに対しても反応が薄い
「え、あの奥様がなぜ…?」というほどのギャップに、混乱されたそうです。
面談が“変わった”瞬間
それでもケアのゴールの話題で「患者さんがどんな方だったか」を尋ねた瞬間、状況が一変します。
- 「パチンコ、競馬、ボートが大好きで…」
- 「運転手として色んな人と話すのが得意だった」
- 「冗談もよく言っていた」
奥様は一気に饒舌になり、ご主人の性格や過去のエピソードを語り始めます。そして漏らされた一言、
「まさかこんな状態になるとは思っていなかった」
さらに、パチンコに連れていこうと考えていたが実行できなかったことへの“後悔”も語られました。
課題としての「話せない」要因の分析
この経験をもとに、「口数の少ないご家族」の背景要因を分析されました。
1. 患者家族側の要因
- 医療者への不信感
- 情報量や病状への不安・混乱
- 感情の整理がついていない
- 意見がまとまっていない
2. 医療者側の要因
- 医療用語や専門用語の多用
- オープンクエスチョンの使い方の不適切さ
- 雰囲気作りや信頼関係構築の不足
- 雑談やアイスブレイクの不足
また、事前の電話で「現状を受け入れられない」と奥様が漏らしていたことを十分に拾えなかったことを、大きな反省点として挙げていました。
面談の“技術”と“姿勢”
面談においては、必ずしもオープンクエスチョンが最適ではないと実感したとのこと。面談中に“話さない”という反応があれば、
- より具体的なクローズドクエスチョンへの切り替え
- 言語化が難しい感情を尊重し、沈黙を恐れない
- ケアのゴールの話し合いを起点とした「その人らしさ」からの関係構築
という視点が必要であったと振り返れました。
在宅医療で目指す“本当の寄り添い”
今回の経験から、このようなことを学ばれたそうです:
「患者の意思が表出できないとき、家族の“後悔”に寄り添うことができるか」
自分は“医師”であり、“家族”ではない。その線引きの中で、どこまで踏み込んでいいか悩みながらも、家族の心残りに対し真摯に向き合うことの価値を再認識したとのことです。
さらに、自身の目標である「在宅医療」への想いにも触れ、
- 病院という非日常空間ではなく、生活の延長である“自宅”だからこそ
- より自然な形で「本心」を引き出すことができる
- 家族のペースに合わせた支援が可能である
と感じたそうです。
振り返りと今後への決意
発表の最後には、飯塚病院で学んだ1ヶ月半を次のようにまとめてくださいました。
- 医学的知識の習得:オピオイド、ケアのゴールの話し合い、ACPなど
- 面談力の強化:「相手が話しやすい空気」を作る技術
- チーム医療のあり方:楽しくも真剣なディスカッションの文化
「自分の病院でも“こんなチームを作りたい”と思える理想のチームだった」
これから在宅医療に進むにあたり、「幸せな最期」をどう定義し、どう支えていくか。その課題を胸に刻んで帰っていく姿が、とても印象的でした。
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