スタッフの石上です。Ceders-Sinai病院の視察報告の続きです。
今回は、末期肝疾患の緩和ケアと外科ICUとのやりとりについてです。
なぜこのテーマかというと、末期肝疾患は、飯塚地域ではかなり多いこと、末期肝疾患のガイドラインや手引きが日本ではまだなく、どのように緩和ケアが関わっているのかを知りたいというところでした。
アメリカの肝臓学会(AASLD)が緩和ケアのガイダンスを出しています。
・症状緩和・意思決定支援などが詳しく載っています。
非代償性肝硬変
Ceders-Sinai病院の緩和ケアは肝臓疾患といえば移植におけるコミュニケーションがメインの印象でした。そもそも米国は年間で8000人肝移植がいますが、日本は年間で400人程度で大きな差があります。
日米の移植の差
実際には移植に至らずWait listに乗るけど、移植できない患者もいるし、乗れない患者もいます。上の論文によると、ホスピスの紹介がある患者は11%しか無いようで米国でもまだ発展途上の分野のようでした。
移植はACPを行うきっかけになるということを言っておられました。
・紹介基準がない
・スティグマ
・アクセスが限定されている
ため紹介は基本的には遅いようです。
なので移植を行う時には緩和ケア医が入るようにしているそうです。
移植におけるコミュニケーションとしては
Best Case Worst Case Scenario(BC/WC)を使っているとのことでした。
こちらは、手術をするかどうか、透析するかどうかの意思決定の時に僕らも使っています。
死亡率や合併症率などを用いた説明
やってみないとわからない
と説明をしがちです。これでは、いい意思決定支援につながらないと言われています。
BC/WCは患者がどのようなコースを辿るかのストーリーをシナリオプランニングで話すという方法です。
不確実性がある手技を行うかどうかを明確に考えることができる良いツールです。何回か書くと慣れますのでおすすめです。以下のような説明の仕方をします。
正確な予測は難しいですが、1番良い経過だと・・(Best)1番悪い経過だと・・(Worst)
私の経験では おそらく・・(Most likely) のような経過になりそうです。
これはStoryベースで患者さんが分かるような形で説明する必要があります。
Patient preference projectがこれの研究をメインで進めており、資料や動画もあります。
You Tubeの動画は患者説明にそのまま使えるようなイメージでもあるので参考になります。
手技をやったケースとやらなかったケースのBC/WCのシナリオを用意して、患者の価値観に合う治療法はどちらかを一緒に考えることができます。以下日本語のスライドも添付しておきます。参考にしてみてください。
またICUでは外科系の医師の思いとICU側の医療者の思いがすれ違いやすく、合意形成もなかなか難しいことを経験するのでどのようにコミュニケーションをとっているかということです。
外科系ICUはガンショットや車の事故でも緩和ケアが入るようにしているみたいです。
移植においてもシステムとして緩和ケアが入るようになっているとのことです。
僕からはどのように入るシステムを作れたかを聞きました。
ここは地道な答えでした。
・教育
・フェローシップやローテーションで緩和ケアを学ぶこと
・部門長と平時からパートナーシップを組むこと
この平時からパートナーシップを組むことがポイントだと思いました。
個々のケースでやると揉めるので、プロジェクトとして推進していくことの重要性を認識しました。
飯塚でも、循環器内科や救急集中治療科とは平時からパートナーシップを組んでおります。
新たな非がんの緩和ケアを行う時のヒントをいただいた気がしました。