スタッフの石上です。

今村総合病院から1ヶ月間、研修に来てくださった白石先生の最終発表です。

病院では食事が取れないと判断しているけれど、食べさせてください!という意見の対立のケースを振り返りました。

食事を取れない高齢者の患者に対しては、MEALS ON WHEELS という語呂がありますね。

介護施設の食事での提供スタイルからゴロになっております。

僕はゴロ全部は覚えられないので毎回調べております。

総合診療的には、がん・薬剤・うつ病など内科的な精査・加療がしっかりなされます。

ただ”その先がない”のが課題だと感じています。 

実際は、認知症のプロセスとして、食事が取れなくなることはよくあります。

その場合に、家族と対立することがあります。 

“病院では食べさせるペースが早い、もっとゆっくり、時間をかけて、1-2時間毎なら食べれる、食べさせ方が悪い。”

“食べさせてるものが美味しくない・気持ち悪いから食べない。持ち込みのものを許可してほしい。”

“体重がどんどん減っていて、かわいそうだから食べさせてほしい。もっと食べるように声をかけてほしい”

などと言われることがあります。

今回は、その面談をコンフリクトマネジメントという観点で振りかえってくれました。 

コンフリクトマネジメントの7ステップは米国緩和ケア医に学ぶ医療コミュニケーションの極意という本にも書いてあります。

手前味噌ですが、石上が行っている連載ではより簡略化した3ステップを載せております。

よくあるコンフリクトに関してはこちらもぜひ参考にしてみて下さい。

まずは、

①自分の感情に向き合う

反射的に出てくるような言葉を言わないことが大事です。 “超高齢で認知症があるから食べられないのは当然””理解が悪いな”と思うかもしれませんがそうした言葉は言わない方がいいです。

②相手の発言の真意を聞く

病院や施設に対する不信感や感情を聞き、承認します。

“腹が立つのは当然のことと思います。ご家族さんがとても熱心に頑張られてるから一層そう感じるのかなと思います。なかなかできることではないと思うのですが、どうしてそこまで頑張れるのでしょうか?”

そして”本人の人となり”を興味を持って聞きます。

“今は本人さんはあまり話せない状態ですが、元々はどんな方だったのでしょうか?” 

本人のことをたくさん話していただき、家族のこれまでの介護に敬意を払って聞くことで対立構造から脱却することができます。

そして、認知症の自然経過として食事が取れなくなるという話であり、やる気や方法の問題ではないことを共有します。人と問題を切り離すというポイントです。

“僕たちも食べてほしいけれど、病気が病気だけに、なかなか食べてもらうことができないんです”

この時に認知症の自然経過のTrajectoryを書くのもポイントです。

認知症は物忘れだけの病気ではなく、暮らしができなくなる病気で、その最後にできなくなるのが、食事なんです。と伝えます。

認知症はスティグマもあるので、難しい問題ですが、できるだけ感情に配慮した上で説明をします。

③第3の道を考える 

ただ、食べられませんというのではなく、食事の内容を好みのものに変えてみる、形状を変える、姿勢を変えてみるなどを行います。

本当に口から食べられないかどうかの場合には以下が推奨されてます。

● 食べ物を食べやすくする工夫をする。

● 本人が好む、おいしいものを出してみる。

● 今の機能状態にあった食べ方を見つける。

● 食べ方、飲み込みの仕方など、介助の方法を工夫する。

● 噛み合せが悪い場合は入れ歯を直す。 

高齢者ケアと人工栄養を考える-本人・家族のための意思決定プロセスノート 清水 哲郎 

“食べ方を変えて数日間試してみましょう。それで食べてくれたら一番僕たちも嬉しいです。”

ただ、それでもよくならない場合は病院では限界かもしれません。

また食べている様子を動画撮影してみせる方法は、お互いの認識のギャップを埋めることができる方法でもあり、行うことがあります。 

認知症の緩和ケアではComfort Feedingという方法も推奨されています。

“今のお身体の状態だと、十分な栄養は取れないけれど、楽しみのための食事はできると思います。”

Eric J. palecek, et al. Comfort Feeding Only: A Proposal to Bring Clarity to Decision- Making Regarding Difficulty with Eating for Persons with Advanced Dementia. J Am Geriatr Soc. 2010 March ; 58(3): 580–584. 

ポイントは、まずは感情に対応すること、その後に情報を共有すること、最後に落とし所の手札を持っておくことです。

白石先生は、すごく物腰柔らかで、患者さんからも人気が高い先生でした。他の科でもぜひ緩和ケアの学びを活かしてくれると嬉しいです。 

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