緩和ケア医になるまでの王道はあるのでしょうか。

がん治療を経験してから、ペインクリニックをマスターしてから、精神腫瘍学の研修が必要など、様々な意見があります。

日本では「緩和ケア」が始まってまだ歴史が浅く、「これが王道」というものはありません。

緩和ケアはがんだけでなく、多種多様な病気で苦しむ人にとって必要なものと認識され始めています。

たとえば診療報酬ではがんだけでなく、AIDSや慢性心不全も緩和ケア診療加算を算定可能です。

2021年には非がん性呼吸器疾患の緩和ケアのガイドラインが発表されました。

循環器や呼吸器の専門をもった緩和ケア医がいてもいい、いやいるべきでしょう。

飯塚病院 連携医療・緩和ケア科ではこれまでのあなたの専門性に「+緩和ケア」をすることを応援します

がん治療+緩和ケア

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これまで日本ではがんを中心に緩和ケアが広まってきました。そのためがん治療の経験があることは緩和ケアを学ぶのに大いに役に立ちます。がん治療医としての考え方や知識に加え、緩和ケアの実践ができることで、早期からの緩和ケアが実現に近づきます。

またがん治療医自身の辛さも理解できることは、医療者のケアにもつながると言えるでしょう。

がん治療領域と関連して、ペインクリニック領域(インターベンション)もまた疼痛緩和の専門家です。

当科では持続くも膜下鎮痛法や内臓神経ブロックなど投薬に限らない緩和的アプローチも実践しています。

総合診療医+緩和ケア

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総合診療医と緩和ケア医の共通点は「患者(人)中心性」を専門とするところです。総合診療医はいわゆる家庭医から病院総合医(ホスピタリスト)まで幅広くありますが、いずれも緩和ケアとの親和性は高いと言えます。

飯塚病院 連携医療・緩和ケア科では同院の総合診療科、頴田病院 総合診療科と連携し、急性期の病院診療から在宅医療・コミュニティホスピタルでの緩和ケアまで提供できる医師を育成しています。

Generalistが50名集まる組織は類を見ません。これまで総合診療医として作ってきたキャリアは緩和ケアを学ぶことによって更に輝くものになるでしょう。

非がん+緩和ケア

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循環器を筆頭に、非がん緩和ケアの普及が国策レベルで進んでいます。日本循環器学会は2021年3月に「循環器疾患における緩和ケアに関する提言」を発表しました。

他にも透析や慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)、救急・集中治療といった領域でも緩和ケアの必要性が叫ばれています。非がん緩和ケアの専門家は今後必要とされる人材です。当科には循環器専門医や救急専門医が所属しており、循環器部門での緩和ケア提供などにも取り組んでいます。

医師以外の経験+緩和ケア

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現在、緩和ケアに限らずチーム医療(transdiscplinary approach) の重要性が叫ばれています。

医師以外の医療職の経験・資格があることで、チームの連携や医師とは異なる視点や専門性を持って診療するという「強み」に繋がります。仕事に限らず、多くの人生経験もまた緩和ケアの引き出しを増やします。

例えばICTもその一つかもしれません。対面して、言葉を交わしてこその緩和ケアですが、新型コロナウイルスの流行により対面でのコミュニケーションは制限せざるを得ない状況になりました。そんな中、ICTに詳しいスタッフがいた当科では早期からタブレットを用いたオンライン面談をはじめました。医師同士のカンファレンスは今もオンライン化し、日々のコミュニケーションにはSlackを用いています。ICTを活用することで、患者さんをよりケアするための時間を作り、組織の運営を安定化させようと努力しています。

心理士の経験を活かしたコミュニケーション、楽器演奏の経験を活かしてコンサートを開くなど、医療以外の経験が最も活きる部門といっても過言ではないでしょう。

他の専門を持たない、純粋な緩和ケア

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何らかの専門研修を経ないと緩和ケア医になれないとお考えではありませんか。

そうではありません。

どうしても臓器専門家になると、その臓器を通じて診療するバイアスが生まれます。たとえばがん治療に携わっていると、過去に強烈な成功体験をしたことが有るはずです。そうすると、どうしてもケア中心の考え方から離れて治療中心の考え方をしてしまうことがあります。循環器治療、ペインクリニック、訪問診療、なんでもそうです。自分の得意なものをつい使おうとしてしまう傾向があります。

まっさらな状態から、卒後3年目から緩和ケアについて学ぶことで、特定の臓器や病態に固執せず中立に緩和ケアを身につけ提供することができます。固定観念なくすっと緩和ケアについて、乾いたスポンジのように学ぶというのは別の専門を持った人では難しいものです。

緩和ケアを先に学んでその後に別の専門について学ぶこともまたよいのではないでしょうか。三つ子の魂百までということわざの通り、若い内に緩和ケアについて学ぶことで、コミュニケーションや症状緩和に長けた専門家になれるのではないでしょうか。

専門をもつこと、持たないことが良い・悪いではありません。がん治療に長けた緩和ケア医が必要なように、中立的視点をもった緩和ケア医もまた必要とされているのではないでしょうか。

さいごに

緩和ケアを学ぶ上で最も重要なことは真摯であることです。

必ずしも経験や年齢は必要ではありません。さあ、みなさまのキャリアに「+緩和ケア」をしませんか。

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